超時空要塞キクロス

キクロスとは菊池市生涯学習センターのことです。友の会の会員が除名覚悟で書いております。

2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧

吉野弘『I was born』

女は身重らしかった。父に気兼ねをしながらも僕は女の腹から眼を離さなかった。頭を下にした胎児の 柔軟なうごめきを 腹のあたりに連想し それがやがて 世に生まれ出ることの不思議に打たれていた。 女はゆき過ぎた。 少年の思いは飛躍しやすい。 その時 僕…

俳句より短い詩

もう少し韻文の話を続けます。 カチリ 石英の音 秋 これは長いこと新潮文庫を愛読されている方には見覚えのある詩かもしれない。小生が十代の頃、創設間もない"新潮文庫の100冊"キャンペーンの小冊子に載っていた。井上靖「青春放浪」からの抜粋。中学時…

玉と石

心をふくらませているのは 旅のわたしたちばかりではない バレリーナーのちょうもしま模様のはちたちも 春のパーティに酔っている 上記は三越左千夫「春の岬に来て」の末尾部分。 教科書に載っていたのをご記憶の方も多いだろう。丸谷才一は"発想は陳腐で下…

遠藤周作『最後の殉教者』

文学フアンに「戦後最高の文学作品は何か」とアンケートを取ると、1~3位を三島由紀夫「金閣寺」、大岡昇平「野火」そして遠藤周作の「沈黙」で占めるのが常だと、どこかで読んだ記憶がある。 ご紹介する「最後の殉教者」は名作「沈黙」の数年前に書かれた…

どちらかが泣く

台風で被害に遭われた方にまずはお見舞いを申し上げます。当地熊本県菊池市では大きな被害は今のところ免れているようですが、玉名→山鹿→日田と近隣と言っていいエリアを通り過ぎるのを待つしかありませんでした。今後もしばらくは、全国の皆様、お気を付け…

Re:文化の違い

先刻書いたことに添付します。 全くここの御主人と話が合いません。 「え?洗髪していただかないと」 (もう30年以上床屋で髪洗うなんてしてもらってへんで) 「今日は台風でお休みですか」 (医療介護従事者が台風ですって休めるかいな) 「今日はお休みで良…

文化の違いはお金の問題

まずはこちらを読んでいただきたいのですが…。三郎君と床屋さん - gooブログはじめました! 実は三郎君というより、ついさっきの小生のことである。1000円の店が台風で休み、仕方なく個人店に行った。 その床屋には「調髪して爽やかな男になろうぜ」みた…

学校で行うべき記述問題

高校の定期テストの生物の問題で、電照菊の開花のさせ方を問う問題があった。 問題.キクを咲かせるのに、人工的に光を当てて開花時期を調整する電照栽培という方法がある。開花を遅らせるのにどういうことを農家が行うのか。このキクが短日植物であることを…

Re:平成の小説ベストテン

昨日1日で250のアクセスがあり、これは自己最高記録だと思います。解析結果で平成の小説ベストテン - 超時空要塞キクロス (hatenablog.com)による効果が大きかったことが分かりました。ただ、知っている範囲で、しかも独断と偏見で選んだものだというこ…

直木賞に落選した“傑作”~絲山秋子著『逃亡くそたわけ』~  

平岩弓枝【会話の妙に感動した。病気を持った男女二人の心の通い合いを九州の自然の中にばらまきながらつむいで行った作者の腕は見事という他はなかった。】 渡辺純一【肝腎の精神病者が普通の健常者にしか見えないし、健常者なのに精神病者にされたのだとし…

平成の小説ベストテン

平成時代に日本語で書かれた小説。小生が選ぶベストテン。 1,雪の練習生/多和田葉子2,八日目の蟬/角田光代3,海辺のカフカ/村上春樹4,メタボラ/桐野夏生5,インストール/綿矢りさ6,蹴りたい背中/綿矢りさ7,蠕動で渉れ、汚泥の川を/西村賢…

綿矢りさのデビュー作

『インストール』朝子は学校へ行かないでチャットに夢中になる、進学校の落ちこぼれ(になる)女子生徒である。しょうもない理由で学校へ行っていない(ここは『蹴りたい背中』の初美と大きく違う。初美は息苦しさに耐えて学校という名の地獄に通っている。本当…

綿矢りさ『蹴りたい背中』

前項〔子どもに詩を作らせるな〕で綿矢の名前を出したので、彼女の芥川賞受賞作について。 ハツはクラス内での孤立している状態、イジメではなく、孤立しようという強い意志がある。だのにクラスメイトの馬鹿話に笑いが堪えきれなくなることがある。笑ってし…

子どもに詩を作らせるな

前項、小生はかなり薄ぼんやりとした子どもであって「遅れている(今は放送禁止用語だろうか)」と思われて致し方ないところもあったと思う。が、おとなを議論で言い負かせることはできないにしても、反論を試みては叱られたという思い出は誰にでもあるだろう…

子どもはなぜ泣くか

右と左 - 超時空要塞キクロス (hatenablog.com) これは前に書いた。右と左が小学1年生まで分からなかった。 もし幼い小生が「突然"回れ右"と言われたって、どっちが右なのか、僕わかりません。あなた方大人は"お箸を持つ方が右"と言うけれど、今ご飯を食べ…

光る君へ(32)

道長の思惑通り、一条天皇は式部が書く物語に興味を示した。その一方でまっとうな公卿にとっては、頭痛のタネ、天皇の覚えめでたい伊周が参議に復帰する。 皆既月食あり、内裏の火事あり、そしてまひろの出仕と実に忙しい。 考えてみれば、意外と中身はない…

熊本の震災

コンビニは何も言わない泣いてても眉毛なくてもちがう彼でも 今日のNHK短歌で第一席だった奥村真帆さんの歌。 (生まれた日 私は生まれて いないけど 思っていたよ おめでとうって=本日の入選&第一席歌) 思い出したことがある。コンビニでバイトしていた…

読者とは…

漫画「のらくろ」の田河水泡は「たがわすいほう」でなく「たがみず・あわ」であった。ところが読者がたがわすいほうと読むので、本人もそう名乗らざるを得なくなったらしい。 松本清張も同じで、本人は「きよはる」のつもりでいたが、読者が皆せいちょうと言…

闇の深さ

フォロワーさんにコメントを書いているとちょっと何をしていたか思い出せないことがある。 ひたぶるに暗黒を飛ぶ蠅ひとつ 障子にあたる音ぞきこゆる これは昨日、日付が変わる直前にご紹介した斎藤茂吉の歌。 暗闇+静けさ=孤独 という数式ができるか否か。…

Re:今日のNHK短歌2024/08/25

誕生を 祝ってくれる クーポンは 私が無職 なんて知らない これにおまけがついた。 誕生を 祝ってくれる クーポンが 今の私の 無職を責める こうすると被害者意識が強くなる。いじけた感じになると。 図書館友の会の総会の前日が東京でセミナーに参加。その…

今日のNHK短歌2024/08/25

当たりの回。 生まれた日 私は生まれて いないけど 思っていたよ おめでとうって (年上の配偶者、または恋人へ) 奥村真帆/那覇市 ※第一席 「おめでとう」 じゃないほうなのね ごめんなさい だけど自由ね 「おしあわせにね」 (かつての恋の相手が誰かと結婚…

斎藤茂吉

ひたぶるに暗黒を飛ぶ蠅ひとつ 障子にあたる音ぞきこゆる 真っ暗な、それもひたすら暗い中で蝿が飛んで障子に当たったであろう音が聞こえる。というそれだけ。 ではなぜ暗いのか。ひとり考えごとをしているからである。そして蝿の障子に当たる音が聞こえるく…

「ここが底と思ったら

そこは底でなく、もっとどん底が待っている」 五木寛之の言葉である。 「自然は人間にどこまでも無関心である」 これは池澤夏樹。 自分の力ではどうしようもできない時がある。これを認めよう。

ドラゴンズファンの皆様へ

初めて野球の話をここで書きます。 熱い時代でしたね。[中日ドラゴンズ] ドラゴンズ・ザ・ファイヤー2009 (youtube.com) 一番熱心なファンだった頃です。

俵万智の散文力~短歌がうまくなりたければ…

逢ひ見てののちの心にくらぶればむかしはものを思はざりけり 藤原敦忠 百人一首でこの歌を知った私は、これは初恋の歌だとずっと思いこんでいた。その人に一目会ったその日から、思い悩む日々が始まった。恋なんて知らなかった昔は、なんにもものを思わなか…

迫間川は「はさまがわ」か?

ローカルな話題になる。 ♪延々貫く菊池川 迫間の川の水清く お年寄りが歌っているのを聞いていると、本来「はざまがわ」であるはずの「迫間川」を「はさま」って歌ってない? 菊池近辺の高齢者は「滑る」(すべる)を「すぺるspell」 「汚い」を「きさない」:…

秋に咲くアサガオ

日差しは既に柔らかい - 超時空要塞キクロス (hatenablog.com) ここに書いたが、日差しそのものは、もうそんなに強くない。が暑い。いつ暑いのか、夜暑い。そう思いませんか。 25°を下回らない=熱帯夜 というのは絶妙の定義であって、夜間25°を超えた気…

田辺聖子『むかし・あけぼの』

光る君へ を見る時に… - 超時空要塞キクロス (hatenablog.com) これを書いてひと月経った。実に短い1か月だ。 以下、数か月前に書いていた・・・・・・・・・・ 田辺聖子『むかし・あけぼの』について記しておきたい。元々角川の「野性時代」誌に連載されて…

光る君へ(14)

光る君へ(13) - 超時空要塞キクロス (hatenablog.com)の補足 右衛門の佐宣孝といひたる人は、「あぢきなき事なり。ただきよき衣を着て詣でんに、なでう事かあらん。必ずよもあやしうて詣でよと、御嶽さらに宣はじ。」とて、 三月つごもりに、紫のいと濃き…

光る君へ(31)

ミーハーなこのドラマファンに神回と言わせたい、という狙いが透けて見える。が、約40分(45分-タイトルバック・予告・回想他)の中で 枕草子には艶やかさがなく、実感を伴わない 源氏物語の作者は、根が暗くてしつこい 物語を書くために直接道長に取材す…