フォロワーさんにコメントを書いているとちょっと何をしていたか思い出せないことがある。
ひたぶるに暗黒を飛ぶ蠅ひとつ
障子にあたる音ぞきこゆる
これは昨日、日付が変わる直前にご紹介した斎藤茂吉の歌。
暗闇+静けさ=孤独 という数式ができるか否か。
ニイチェはDie Welt ist tief. と謂へり。と同時に茂吉は書いている「世界は深い」という意味らしい。
韻文の世界で、教科書などに取り上げられていることで
「こがね虫なげうつ闇の深さかな」
「海に出て木枯し帰るところなし」
を大傑作だと思っている人は多いと思う。小生もそうだ。
金亀虫 擲つ闇の 深さかな
が高濱虚子の原文らしい。「光るコガネムシを投げてみると姿が見えなくなるくらい闇が深いのだ」という解釈は、日常的に日本語を使っている者なら共有できるであろう。これは凄いことだ。
実際に勤務先の同僚の前でこの句を口にしてみたことがある。「言いたいことがあるのに周りになかなか伝わらない」という意味で言った。学習塾に勤務していた時だから、こういう有名な韻文に触れる機会は多い故、同僚には通じた。学習塾という条件の下だからこそ出来たことで、他所で言ったら「何だコイツ?」と思われるに違いない。
人は「言いたいことが伝わらない」ことで孤独を覚える。それが悩みの種になっていることは実は多いのではないか。世間の闇は深い。
※木枯しの句については改めて書きます。