読書量が少ない。時間が取れない。ならばと苦し紛れに韻文を読んでいる。
2週間と少々で読了。他の出版社から出ているのもあるから探して、是非買って読んでいただきたい。
散文と韻文を大きく区別しているわけではないようだ。
巧緻な文章は長文には不向きで、芥川龍之介が長編を書かなかったのはさすがである。とは松本清張、
いつものことだが
電車は満員だった。
そして
いつものことだが
若者と娘が腰をおろし
としよりが立っていた。
うつむいていた娘が立って
としよりに席をゆずった。
そそくさととしよりが坐った。
礼も言わずにとしよりは次の駅で降りた。
娘は坐った。
別のとしよりが娘の前に
横あいから押されてきた。
娘はうつむいた。
しかし
又立って
席を
そのとしよりにゆずった。
「夕焼け」より一部抜粋。難しい言葉が文学を支えているのではない。ごく日常的な語彙の積み重ねである。
“第一印象は良くしないとってカッコつけるよな。やめた方がいいぞ。”ビジネスの達人の言葉だが、それは、書くことでも同じ。「俺ってボキャ豊富なんだぜ」「たくさん本読んでるぜ」と威勢良く書き始めても、結局はボロが出る。