超時空要塞キクロス

キクロスとは菊池市生涯学習センターのことです。友の会の会員が除名覚悟で書いております。

俳句より短い詩

もう少し韻文の話を続けます。

 

カチリ

石英の音

これは長いこと新潮文庫を愛読されている方には見覚えのある詩かもしれない。小生が十代の頃、創設間もない"新潮文庫の100冊"キャンペーンの小冊子に載っていた。井上靖「青春放浪」からの抜粋。中学時代、ガキ大将の紙問屋の息子が披露してくれたそうである。

余談になるよ。今の55歳くらいから上の方にはお分かりいだだけると思うが、旺文社は単なる受験参考書・問題集出版社ではなく、受験業界を仕切っていた。旺文社模試を導入していた進学校も多かった。その旺文社が旺文社文庫を出して名作と言われる(厳密には学校の定期テストや受験に出そうなものをカバーしている)ものを収録し始めたものだから、それに対抗する意味で、文庫100冊なんていうのを設けたのではないか。と、今思っている。

私はこの短い詩を見せつけられたとき、なるほど詩というものはこういうものかと思った。…そうである。俳句より短いが、充実感がある。

 

太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。

この三好達治「雪」は、よく知られた短い詩である。

 

堀口大學「昔」。これも二行詩。

せまいベッドを悦んだ

そんな昔もありました

「れ?シャ乱Qのシングルベッドじゃんか」と思う方もおられるだろう。つんく♂がこれを知っていたかどうかは別にして(多分知らないと思う)発想は同じ。

いいよね。プロフェッショナルがやたら長い詩を書いているけれど、俳句や短歌を知っている我々には、短い詩の方が刺さる気がする。

 

新潮文庫『幼き日のこと 浅春放浪』に収録されている。『しろばんば』が名作とされているが、あれはフィクション。こちらをお薦めしたい。同じ井上の自己形成ものでは『夏草冬濤』も良い。

あすなろ物語』×

しろばんば』△

『夏草冬濤』〇

『北の海』×