超時空要塞キクロス

キクロスとは菊池市生涯学習センターのことです。友の会の会員が除名覚悟で書いております。

綿矢りさ『蹴りたい背中』

前項〔子どもに詩を作らせるな〕で綿矢の名前を出したので、彼女の芥川賞受賞作について。

ハツはクラス内での孤立している状態、イジメではなく、孤立しようという強い意志がある。だのにクラスメイトの馬鹿話に笑いが堪えきれなくなることがある。笑ってしまえばそれは同化してしまうこと、つまりは自分がごく普通にクラスの一員となることを意味し、忌むべき行為なのである。皆と仲良くしたいという気持ちを保ってもいて、実は平凡なのである。

狂言回しのにな川は、ハツを更に上回る存在で、孤立する存在であることを何とも思っていない超オタク。孤立を越えた孤高がある。そのにな川に啓発(?)され、自身の持つマゾヒスティックな面を露わにしていく。歪んではいるものの、ひとつの愛のかたちが出来上がる。

にな川が「好き」でもあり「嫌い」でもある。それは長年連れ添った夫婦の関係に似ているとも言えないか。

※この小説をジュニア版の読書案内に「青春のほろ苦い思い出」などと書いてあるのを見て失笑を禁じ得ません。それは文学音痴もいいところだからです。

時間があれば、この作品については、じっくり書いてみたいと思います。