超時空要塞キクロス

キクロスとは菊池市生涯学習センターのことです。友の会の会員が除名覚悟で書いております。

『雪の練習生』その3

 パートⅢ:北極を想う日
クヌートはベルリン動物園の人気者である。トスカより大事な存在は自分を育ててくれた飼育係のマティアスで、彼こそが母親だとクヌートは慕っているし、マティアスも単に職業という責任感以上の愛情をクヌートに注いでいたのである。ついうっかり一緒に遊んでいる内に爪でマティアスに怪我をさせてしまう。「可愛い人気者」から「獰猛な野生動物」へと真逆の存在に変わる。一体自分は何者なのか。クヌートは自分のルーツが気になって仕方なくなる。

 

マティアスの姿が見えないとつまらない。いつになったら来てくれるんだろうか。これが「時間」というものだとクヌートは悟る。
パンダからクヌートは教えられる。パンダもホッキョクグマも絶滅しそうだから、それを防ぐために可愛い顔になる(人間に可愛いと思われる)のだと。
新聞を読む習慣のあるクヌートはトスカが育児拒否した結果、マティアスに育てられたことを知る。そして、自分の処遇を巡って裁判が起きていることを知る。
人間社会の事情、つまり、サーカスは動物虐待ではないのかという愛護団体が登場したり、経済的事情から餌を減らされる、クヌートを父親と再会させる計画がある…などによってクヌートの運命は翻弄される。
先述の「一体自分は何者なのか」という問いは、我々読者が自らに問いかけるものでもある。是非本書(新潮文庫版)を手に取って、巻末解説まで味わっていただきたい。

 

追記;

以上は2年前に別ブログで書いた物を再編集しました。「幸福とは何か?それは人によって左右されるものではなく、自分で探し求めるものである。」ということを小説化したものだと思っています。

少し前に書きましたが、下記『最後の殉教者』の短縮版を某所に投稿したら、文章を書き換えられ、字を間違えられ、それが悔しくて書いたものです。

遠藤周作『最後の殉教者』 - 超時空要塞キクロス (hatenablog.com)