超時空要塞キクロス

キクロスとは菊池市生涯学習センターのことです。友の会の会員が除名覚悟で書いております。

井伏鱒二のこと

勧君金屈卮

満酌不須辞

花発多風雨

人生足別離

満酌(まんしゃく)辞するを須(もち) いざれ

花発(ひら)けば風雨多く

人生別離足(た)る

「この黄金の大きい杯でぐぐっとやってくれ

なみなみと注いだのを断ってくれるなよ

花が咲けば嵐も多い

人生に別れはつきものだ」

井伏は

コノサカヅキヲ受ケテクレ

ドウゾナミナミツガシテオクレ

ハナニアラシノタトヘモアルゾ

サヨナラダケガ人生ダ

 とした。

 

 読書、というものを意識し始めた十代前半の頃、文学史に足跡を既に残した井伏鱒二が存命であるというのが不思議だった。
 ずいぶん後で気が付いたが、当時まだ生きていた父方の祖母は明治30年生まれで井伏鱒二より1歳年上だったのである。高校の副教材の浜島書店の国語便覧に載っているのを見て、遠くかけ離れた存在だと思ってしまっていたのではないか。井伏は95歳まで長命したから、その分、別離というものも数多く経験したことだろう。

※小生は昭和38年生まれの60歳です。